AI(artificial intelligence 人工知能)は今や人間に身近な存在となっている。
スマホでは音声アシスタント入力が当たり前となり、我が家ではAmozon Echoが家族の必須アイテムとなっている。LINEでは「りんな」というバーチャル女子高生(今は卒業して歌手と画家になってるらしい笑)が暇な人の話し相手になってくれる。
そのAIが将来人類の仕事を奪うのでは無いかと叫ばれて久しい。
2013年、英オックスフォード大学でAI研究者のマイケル・A・オズボーン准教授が、カール・ベネディクト・フライ研究員とともに発表した論文『雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか』において、将来「消える職業」をリストアップして、全世界に衝撃を与えた。


その「消える職業」の中に、測量技術者が含まれていたことから、土地家屋調査士業務も将来消滅してしまうのではないかと危機感を抱くきっかけとなった。
その後2015年に野村総研からも同様の発表がなされ、測量士がAIによる代替可能性のある職業とされ、危機感に拍車をかけた。

果たしてAIの将来性は如何なものなのか?
2013年の論文に刺激され、ここ数年、AIに関する書物を読み漁ったり、日本でAIの第一人者の一人である東京大学松尾豊教授(https://weblab.t.u-tokyo.ac.jp/)の講義を聴いてみたり、オンライン学習機能に参加したりと、少し個人的に研究してみた。いわゆるシンギュラリティ(技術的特異点)の到達によって、AIは人類の知能を凌ぐと言われている。予測ではその到達時期が2045年らしいので、今50歳代以上の方は取り敢えず余り影響を受けなさそうではある。が、研究や技術が進むに連れ、その到達予測時期が前倒しになる可能性もあるという。人間の脳を真似たニューラルネットワークを深層化させた「ディープラーニング(深層学習)」というシステムも今や聞き慣れたワードとなり、更なる進化へ突き進んでいると言う。
医療の世界はAI化が最も進んでいる分野の代表例である。癌の診断など画像解析処理に関わる分野はAIが最も得意とする領域だ。自動車の自動運転技術も研究が進み、実用化が見え始めている(交通事故におけるディーラー側の法的責任の課題がクリアーできるかの問題はあるが・・・)。音声識別システムは10年前とは格段に進化した。単に人の音声を識別するだけではなく、その意味を考え、対応するフレーズを自発的に発し行動に移行するのだ。もうひと昔のSF映画が実現している。

では、隣接する各士業の反応はどうであるか?
AI
特に定型文書の作成に重きを置いている司法書士・弁理士・行政書士・税理士・社会保険労務士の危機感は極めて高い。弁護士にしても安穏としてはいられない。既に膨大な判例をAI化し導入した法律事務所も出てきている。
ビッグデータの入力が完成しさえすれば、定型業務をメインとしている職業は、AIによる代替可能性が一気に進むだろう。

逆に、中小企業診断士は生き残る士業と言われている。何故か?定型業務では無くコンサルティング業務をメインとしているのでAIが苦手とする分野のようだかららしい。どうやら「コンサルティング」が生き残る為の本質の一つのようである。

では土地家屋調査士はどうだろうか?
登記申請業務自体は代替性が極めて高く、いずれAIに取って代わられるだろう。ドローンや3Dレーザースキャナー等測量技術の進化によって、現場測量も人の手を介する事が無くなり、自動機械化による代替可能性が高くなるであろう(測量士が消滅する要因でもある)。建物調査や現況測量などはAI化が確実に進む領域である。何も夢物語を語っているのでは無い。確実に実現の方向へ進んでいる。
生き残るとしたら、筆界確認の立会業務や、不動産利用に関するサポート業務、境界紛争事件代理業務(筆特・ADR)などでは無いだろうか?
筆界確認業務における隣接地権者との折衝や現場での意見調整(ミニADRと言われる)の交渉力、不動産の有効利用に関するサポート力のスキルはたやすくAI化されにくい。
突き詰めるならば、「コンサルティング力」を今以上に研ぎ澄まし、AIには代替不可能な迄のスキルへ高めることが、我々土地家屋調査士が生き残るキーワードとなりそうだ。だからこそ、今40歳台から若い世代の会員には、日々の忙しい内業外業にだけ追われるのではなく、ADRにおいて培われるような交渉力やコミュニケーション力、そしてコンサルティング力を是非とも身につけて欲しい。その為のセミナーへは自腹を切ってでも積極的に参加していただきたい。

ただ、AI全てを過剰に敵対視する必要は無いだろうと思う。AIを有効に利用する視野も必要である。先例・通達・境界判例などでのビッグデータはAI化を促進するだろう。また筆界認定の技術的スキル(鑑定能力)は、鑑定事例のビッグデータ入力によってAIによるシステム化(筆界の自動判定)が進むだろう(既に実施に向けた研究が一部で行われている)。将来的にはこれらを我々のツールとして利用することも視野に入れて置く必要があるだろう。

できれば、会員研修でも「AI」をテーマとして企画したいと考えているが、講師の選定に手間取っている。近い内に是非とも実現したい。

因みに、私はコンサルタント関係の本を読む機会が多い。