夜更けの思索者

土地家屋調査士・行政書士・CALS/EC RCI 橋本伸治のブログです。仕事に関する記事や日頃感じているエッセイなど熟々と書き綴っています。

2009年10月

2009年4月23日の東京高裁判決は「一般に建築設計契約は、設計図書の作成および引き渡しを目的とする請負契約と解される」という判断を示した。その後最高裁に上告されたが、9月3日却下されて判決は確定した、と言うものである。

建築設計業界では従来建築設計契約は準委任契約と解してきたようである。
しかし、この判決のように設計契約が請負契約となると、原則として、成果物である設計図が完成して初めて設計報酬が支払われることになり、さらに、その設計図に瑕疵があれば、設計者に故意や過失がなくても設計責任が生じることになる、と言う。
裁判ではこの設計図に瑕疵があるか否かが争われたようだ。
つまり、基本設計の後、実施設計に基づいて見積もられた工事金額が予定工事金額を大幅に上回り、工事自体が事実上困難となり、実施設計の債務不履行責任が問われたと言うものである。

我々調査士業界でもこの種の似たような議論は前々からあった。
しかし、今や、測量業務に関しては請負契約、登記申請業務に関しては準委任契約と解するのが現在の大方の趨勢であろうが、設計業界のように一律に請負契約と断ぜられると、逃げ場が無くなるのであろう。

当然の事ながら請負契約となるとその業務が完成するまで請負人の義務が続くことになり、完成まで報酬も請求できなくなる。
もしも登記申請業務を請負契約と解されたならば、例えば、測量→境界立会・確認→分筆・地積更正登記申請→登記完了、というフローで、境界確認が完遂されなかった場合、債務不履行責任を問われることになるわけだ。
これはたまったものではない。たまたま依頼人が隣地とケンカしている現場であったら、受託そのものを拒否せざるを得なくなる・・・
と、いろいろ不都合が生じてくるわけであるが・・・・

この高裁判決、建築業界にどのような波紋を広げるのやら・・・


しかし・・・
もっと恐ろしい事実をつい最近知った。

実は土木工事業界では、基本設計図は単なる積算用のものであって、実際の現場施工では全く使い物にならないため、基本設計図とは別に現場サイドで施工図が勝手に作られ、これに基づいて施工される事が多いという。
これが真実であれば、いやはや呆れた話である。
発注者がその施工図を了解しているならば問題は追完されるであろうが、それが全く示されずに施工されたとしたら、なにがしかの欠陥が発覚した場合、施工サイドはどう責任を取るつもりなのであろう?
発注者・設計者・施工者3者が共通して同じ設計図を認識していなければ、とんでもない事故を招くのは必然であろう。
現場側のエゴの何物でもない。いや、設計サイドのエゴも多分にあるのであろう。

私たちの業界も、李下に冠を正さず、常に誠意ある対応を心掛けたいものである。

土地家屋調査士にとって、しかも測量業務をこなす時において、隣接地権者から境界確認の署名捺印をもらうことほど、神経を磨り減らし、胃が痛くなるような想いをすることは無いかもしれません。

今回の測量事件でも、(まぁ大概一地域にお一人くらい必ずいるものですが)、「あの人は気難しくて変わり者だから、境界同意のハンコをもらうのは至難の業ですよ」と、依頼者はじめ皆さん口を揃えておっしゃる方がいました。

ここでよく落とし穴にはまってしまうのは、そんな意見を真に受けて、色眼鏡で「あの人」に接することでしょう。

こちらがそういう邪険な想いをもって接していると、たいてい相手はそんな想いを見透かして、「あぁやっぱりお前もか!」と、殻に閉じこもるものです。

そんな他人の意見をまともに受け取らず、心をまっさらにして接すると、こちらの誠意が相手にも伝わるものなんですね。

今回の事件でも、「あの人」と最初にお会いしたときは、確かに少し変わった節も見受けられましたが、そんなことは意に介せず、誠心誠意、相手の不安を極力取り除くよう説明を重ねた結果、
「あなたは信頼できる方だ、わかりました、ハンを押しましょう」とおっしゃってくれました。
ここでは、とにかく相手のお話を傾聴することから始め、いわゆるメディエーションの技法を所々に織り交ぜながら、相手の気持ちを解きほぐすことに務めました。
それが功を奏したようです。

こんなありがたい言葉をかけていただくと、この仕事をやってて良かったと思います。
そうした信頼が積み重なって、仕事を紹介してくれる、なんてことも結構多くなるものですね。

私の事務所では、隣接地主からの依頼や紹介が結構多いというのも、特徴の一つです。

ADR認定土地家屋調査士の官報告示がなされました。
http://kanpou.npb.go.jp/20091015/20091015g00220/20091015g002200003f.html
栃木県土地家屋調査士会では、22名が受験し、21名が合格。
なんと合格率95%強。
いやぁ びっくりです。

研修部長時代に、ADRプレ研修会を企画したところ、講師を受けてくれる方が誰もおらず、自分が講師をする羽目になりましたが、この結果を目にしてその苦労が報われた思いです。

とりあえず責任は果たせた、と自分を褒めても良いでしょうか!?

しかし、相変わらずADR認定土地家屋調査士の代理活動が表に出てきません。
弁護士との共同受任がネックなのは明らかですが、弁護士への周知・広報活動が不足なのもまた明らかのようです。
まずは、弁護士会に調査士ADRを認知してもらうことが先決でしょう。
そして、弁護士と共通言語で話せる真のADR認定調査士となることも又大切。
もっとも、調査士って結構SHYな方が多いのでしょうか?

この三連休は、お休み返上で、測量現場を4現場駆け巡ってました。
たまりにたまった現場をこなしていくと、精神衛生上極めて良好ですね。
おかげで、妻とのつまらないケンカも無くなり、家庭円満という副産物も♪

一昨日の10月11日は、○回目の結婚記念日だったので、現場から帰るなり、正装に着替えて、二人でお洒落なレストランへ。
終始ニコニコ顔の妻を見てると、「たまにはこういうお店に連れてこないとなぁ」としみじみ・・・
いつも陰ながら感謝してますよ、奥様。
(でも、ちゃんと言葉に出して言わないとね。。。)


昨日はどうしても駅前中心街の測量現場だったので、街区基準点測量の都合もあって、早朝6時から測量してると、なにやら温厚な紳士がツカツカと近寄り、「おたくは休日なのに、早朝から仕事とは感心だね。実は分筆登記を頼みたいのだが・・・」とおっしゃる。
持っていた公図で確認すると、どうやら近くの大地主さんの模様。
さすがに経験豊富らしく、土地家屋調査士も不登法改正のこともご存じのようで・・・
まぁ、見積もりを出すまでは甘い期待はしないでおきますが。。。

でも、こんなサプライズ・ハプニングも「早起きは三文の得」のお陰なのだろう。
仕事満足・家庭満足の3日間でした。

法曹の世界にも「司法官僚」という言葉があった。。。

馬場健一教授(神戸大学大学院法学研究科)は、違憲判決を書いた裁判官らの処遇を調査したところ、左遷されるなど判決の前と後で処遇が明らかに変わっていると述べているとのこと。
それもこれも、後に最高裁長官となる人の大半が最高裁事務総局の各局に「局付」として任用され、その後、最高裁事務総局の主要な課長ポストを経験し、地裁所長、高裁長官として現場の司法行政に携わり、違憲判決を書いた裁判官を左遷させているのだという。
この意味で、最高裁事務総局はエリート職業裁判官であるということは言うにおよばず、司法官僚にほかならないと分析している(「司法官僚 裁判所の権力者たち」岩波新書2009)。(以上は田中早苗弁護士談から抜粋)。

いやはや・・・裁判官の独立性どころではない、とんでもない弊害であろう。
結局過去に違憲と断じた最高裁裁判官のほとんどが人事にあまり影響されない弁護士出身だったというのも頷ける。
しかし、その弊害に真っ向から立ち向かい、違憲判決を書くことに臆しない生粋の裁判官が出てきているという。
憲法の理念上は至極当たり前のことなのだが、それがようやく日の目を浴び始めたと言うことか?
その原因の一つが、「一人一票実現国民会議」による最高裁判事国民審査での不信任キャンペーンだというのだから、何とも皮肉な話ではある・・・
日本の司法制度がそれだけ立ち遅れていたという証になってしまった訳だね。

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